第9回 慢性腎不全患者さんのための社会保障制度
慢性腎不全の患者さんが安心して経済的に治療を受けられるよう、公的な助成を受けられることが出来ます。
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医療保険について
【医療保険】
下記いずれかの公的保険に加入することになっています。
患者さんが診察を受けた場合、通常は医療保険が適用されます。患者さんには医療保険の適用となった治療費のうち、各々の加入する医療保険の負担割合に基づいて請求がなされます。
医療費の自己負担割合は以下の通りです。
75歳~:一般所得者は1割負担、一定以上所得者は2割負担、現役並み所得者3割
70歳~74歳:2割、現役並み所得者は3割
6歳~69歳:3割
~5歳:2割
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医療費軽減のための制度
【高額療養費】
1カ月の自己負担額が、年齢や所得に応じて上限を定められている医療費を超えた場合、その差額を払い戻しされる制度があります。
申請方法
国民健康保険と健康保険組合の保険は、時期が来ると保険者から通知があり、その指示に従って申請すれば戻ってくる場合が殆どです。
政府管掌保険の場合は、各々の社会保険事務所の窓口にあるため、印鑑と領収書、預金通帳を持って窓口で申請をします。
※高額療養費制度では、先に自己負担額を負担する必要があります。高額療養費が戻るまでの間、支払いに困った際にはその資金を保険者が無利子で貸し付けてくれる「高額療養費貸付・委任払い制度」があります。利用を検討される場合は加入されている公的医療保険にお問合せ下さい。
※詳細は保険によって異なるため、それぞれの保険者の窓口や病院に相談して下さい。
※入院時の食事代の自己負担を除きます。入院時の食事代は医療費とは別に保険給付されます
【医療費控除】
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間の間に支払った医療費が10万円を超えるときは、実際にかかった医療費の額を基に計算される金額について、所得控除を受けることができます。
上限を200万円とし、以下の式から求められた医療費控除を受けることが出来ます。
(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円※
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
また、総所得金額等が200万円未満の場合は、医療費が10万円未満の場合でも医療費
控除が受けられることがあります。
申請方法
税務署にて手続きを行います。手続きを行う際には、「医療費の支払いを証明する書類」「医療費控除の明細書」「源泉徴収票」「確定申告書A」「マイナンバーなどの本人確認書類」が必要となります。
※高額療養費制度と医療費控除の注意点※
医療費控除は所得などから計算された医療費の上限額を超えた金額に対し、発生する控除となります。一方、高額療養費制度は、医療費の上限額を超えた分の金額が全て戻る制度となります。経済的な面を考えると、医療費控除よりも高額療養費制度を使用した方が負担は少なくなります。
また、算出された医療費の上限額と1年にかかる医療費によっては、どちらも併用することが出来ます。
併用する際には高額療養費制度を利用してから、医療費控除を適用するほうが医療費の負担が最も少なくなります。
例えば・・・
☆窓口負担額30万円 上限額15万円の方の場合
高額療養費制度を利用すると、窓口負担額は30万円になりますが、医療費の上限額15万円との差額の15万円が戻ってくるため、実際の負担額は上限額の15万円となります。
実際の負担額が15万円で10万円以上を超えています。そのため、医療費控除の適応となり、実際の負担額15万円-10万円=5万円分が、医療費控除の対象となります。
【特定疾病に係る高額療養費支給特例について】
透析治療などの人工腎臓を使用して治療を行っている慢性腎不全患者は、その治療を長期間にわたって継続しなければならず、高額な医療費が必要となります。そのため、医療費負担を軽減することを目的としてつくられたのが、この制度になります。
慢性腎不全で維持透析となった場合、透析とそれに伴う治療に関して、保険分の医療費の自己負担が1か月に1万円となります。(70歳未満で被保険者の標準報酬月額が53万以上の場合は2万円となります)
申請方法
透析導入となったら、加入している健康保険の窓口から「長期特定疾病療養受療申請書」の用紙を取り寄せ、担当医に必要箇所の証明をしてもらった後、必要事項を記入し、再度各保険者へ提出します。その後、「療養受療証」が送られてきますので、その受療証を病院とかかりつけの薬局の保険登録(変更)窓口に提出し、登録することで、窓口での負担は自己負担限度額までとなります。
※この制度は、申請した月の1日から適用になります、月末に導入した場合は早急に手続きを行う必要があります。注意して下さい。
【重度障害者医療費の助成】
身体障害者手帳をお持ちの方の医療費が助成される制度です。この制度は各都道府県や市区町村が独自の制度として助成を行っています。そのため、都道府県または市区町村により、名称、所得制限の有無、助成対象、一部負担金が異なります。
申請方法
お住まいの地域のルールに沿って申請して下さい。
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透析導入後の所得保障について
【障害年金】
障害年金は、年金加入者が65歳前で、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。
障害年金は加入していた年金制度から支給されます。国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」、共済組合に加入していた場合は、「障害共済年金」が請求できます。障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります
また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。
障害基礎年金または障害厚生年金(障害等級1級・2級に限る)を受ける方は、国民年金保険料が免除されます。
申請方法
国民年金の方は、市区町村役場国民年金課、厚生年金の方は、事業所を管轄する社会保険事務所、共済組合の方は、共済組合にて必要書類をもらい、必要書類と医師の診断書等をそろえて、各窓口に申請します。
障害基礎年金
※子の加算額
2人まで 1人につき 228,700円
3人目以降 1人につき 76,200円
障害厚生年金
1級:(報酬比例の年金額※1)× 1.25 +〔配偶者の加給年金額(228,700円)〕※2
2級:(報酬比例の年金額)+〔配偶者の加給年金額(228,700円)〕※2
3級:(報酬比例の年金額)
※1報酬比例の年金額は年金の加入期間や過去の報酬等に応じて決まります
※2その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。
障害共済年金
年金額=厚生年金相当額※1+職域加算額※2+加給年金額(223,800)※3
※1厚生年金相当額:
平均給料月額 × 7.125 / 1,000 × 平成15年3月までの組合員期間の月数
+
平均給与月額 × 5.481 / 1,000 ×平成15年4月以後の組合員期間の月数
※2職域年金相当部分
平均給料月額 × 1.425/ 1,000 × 平成15年3月までの組合員期間の月数
+
平均給与月額 × 1.096/ 1,000 ×平成15年4月以後の組合員期間の月数
厚生年金相当部分、職域年金相当部分ともに、障害認定日が属する月までの組合員月数で計算します。また、障害認定日までの組合員月数が300月未満の場合は300月とみなして計算します。厚生年金相当部分、職域年金相当部分ともに、障害等級が1級の場合は、上記の額にさらに125/100を乗じます。
※3加給年金額とは障害の程度が1または2級の障害共済年金について、その方によって生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。